守るもの
- 2013.06.08
昨夜の「O Faia」に引き続き本日もCasa de Fadosめぐり。
今日は名店「Sr.Vinho」こちらはファディスタのMaria da Féがオーナー、お料理にもファディスタの歌にも彼女のこだわりが感じられるお店でした。
街の中心からは離れた場所にあります。この紳士のロゴが目印、お料理のお皿にもこのロゴが入っています。
お席は演奏の場所の目の前、アレンテージョ地方の伝統のお皿や古い楽器が飾られてとてもいい雰囲気です。
こちらで師匠アントニオ・パレイラの長男であるパウロ・パレイラが弾いているのですが、今日は男性ファディスタのカマネーの伴奏でポルトへ行っているとのこと。彼の素晴らしいポルトガルギターを聴きたかったのですが、実力あるギタリストは6月は多忙で飛び回っているので仕方ありません。
ほぼ真っ暗でごめんなさい、「フラッシュ撮影禁止」なのです。
このお店はそういった配慮が素晴らしく、着席した際に「フラッシュ撮影禁止、動画撮影禁止」が伝えられます。
また、お客に対してもきちんと「静かにさせる」ことを徹底します。ファドが始まる際に明かりを暗くして、普通ならすぐ演奏者が出てくるのですが、このお店は明かりを落としてスタッフが「シー」と音を出し静寂を作ります。そうなってから演奏者が入ってくるのです。
歌手がオーナーだけあって納得でした。
歌手はなんと5人、女性が4人と男性1人でしたが、レベルは高く、カスティーソとマルシャの曲をメインに展開されていました。
歌手の歌う奥でオーナーのマリア・ダ・フェが厳しくチェックをし、あとでダメだしがあるので、歌手たち、特に最初の方に出てくる若い女性歌手たちは真剣に取り組んでいるのが手に取るようにわかります。一曲一曲全力で歌っているので、一人一人の個性が余計に見えてきて、私は彼女たちにとても好感をもちました。
私は歌手の視点でどうしても見てしまうので、偏ったレポートになっているかもしれませんがご容赦を。
マリア・ダ・フェの考えるファドが継承されているので、ジェスチャーや選曲に共通するメソッドが見受けられました。恐らく「こんな曲をいれなさい」という指示があるのでしょう。さらに女性歌手は衣装面や声の点でもクリアしなければならないオーナーからの課題が多くあるようで、そのひたむきな姿が美しかったです。
もちろん声量、言葉の運びも上手な方が多く、順番にうまい歌手が出てくるのも一流店ならではでした。
昨夜の「O Faia」も家族運営の店ですが、ヴィオリスタの家系が運営しているのでお店の個性が異なります、この違いも聴き比べるには興味深い点です。
最終的にオーナーのマリアは歌わなかったのですが、トリを務めた40代の女性の方が素晴らしかったです。
5曲すべてファド・カスティーソで、各曲詩の行数の異なるものを選んでいました。つまり、4行詩のあとに4行詩というように同じ構成の詩を続けて歌わないことが粋なのです、この約束を知っている歌手は少ないと同行したポルトガルギター奏者の月本さんが教えてくれました。
伝統と格式を守る…と言ってもファドの歴史は200年ほど、今の形のようになってきたのは100年前後のことなので、いろいろなあり方があります。それぞれの店が「こんなファドを」と守っているものがあり、それを発見するのも楽しいところです。
さて、この一流店のあとは、真夜中の、いや明け方のファドの店へはしごとなりました。
まったく違う世界が待っていて、度肝を抜かれるのですが、続きはまた。
Até logo!