歌い継がれる叙情の系譜
- 2018.06.11
本日は神田外語大学でのレクチャーコンサートに出演させていただきました。
観客は100名を越える学生さん!
当時としては珍しい、女性が男性への想いを歌うカンティーガス・デ・アミーゴ(13世紀)、
聖母マリア讃歌のカンティーガス・デ・サンタ・マリア(13世紀)、
そしてポルトガルのファド(19世紀-現在)、
叙情の系譜を探るべく、黒澤先生の講義と私たちの演奏で取り上げました。
津森久美子(歌・ギター)、藤沢エリカ(歌)、上田美佐子(中世フィドル)
学生さんたちは私たちがびっくりするくらいしっかり聴いていてくれて、
講演会のリアクションペーパーにはここでは書ききれないくらい
何が気になったか、興味を持ったか、書いてくれました。
人気だったのはエリカさんが使っていたレインポール。
ビーゴの波の音を感じてもらうために用意したのが大好評。
また、中世フィドルの弦が羊の腸で出来ていることも興味深かったよう。
他にも、ガリシア語と現代ポルトガル語の発音の違い、
12世紀ころからある詩が現代にまで歌い継がれてきたこと、
ファドの詩が韻を踏んでいること、
などが挙げられました。
私がとても嬉しかったのは、
「自ら命を絶つことをタブーとするカトリックの考えの中で、
辛くても生きてゆくためにファドが心を支えてくれる」
と、お話ししたのを受けて、
ファドはただ悲しいだけでなく強さや生きる力がある、そう思うと違って聞こえてくる、
歌詞が完全に理解できなくても伝わってくる、
そんな風に書いてくれた人がたくさんいた事でした。
古楽やファドといったマイナージャンルを専門とする私たちには、
こうやって感じて「もっと知りたいと思った」という声がとても力になります。
また、この講演会に合わせて大学の図書館にこんなコーナーを作って下さいました。
大学にあるファドのCDがアマリアくらいしかなかったので、
日本で手に入るおすすめCDを昨年ご紹介したところ、
こんなポップ付きで展示してくださいました。
神田外語大学の吉野先生(左)とは昨年からこの講演会へ向けて打ち合わせを重ねてきました。
以前ガリシア語のアドバイスを下さった東京外語大学の黒澤先生(右)とも念願叶ってご一緒できました。
そして、この演奏ができたのは昨夏エリカさんが企画してくれたコンサートがあったからこそ。
同志に、素晴らしい機会を下さった先生方に感謝です!
大合唱してくれた学生の皆様、
また駆けつけて下さった一般参加の皆様も
ありがとうございました。
これからの学びに、今日の演奏が何かヒントやきっかけとなれば幸せです。
【プログラム】
◆カンティーカス・デ・アミーゴより(マルティン・コダス作)
Ⅰ. Ondas do Mar de Vigo ビーゴの波の海よ
Ⅳ. Ai Deus, se dab’ora meu amigo ああ、神様、私の恋人はわかっているのでしょうか?
Ⅱ. Mand’ei comigo 私のもとへ手紙が来ました
◆カンティーガス・デ・サンタ・マリアより(アルフォンソ10世編纂)
Ⅹ. Rosa das Rosas バラの中のバラ
◆ファドより
Amor de Mel, Amor de Fel 蜜の愛 苦い愛
Barco Negro 暗いはしけ
Canção do Mar 海の歌
Lisboa Menina e Moça 麗しのリスボン
Até logo!