消え去った棘
- 2022.12.04
時間が空きましたが、ファドコンサートツアー「遙かなるサウダーデ」大阪公演も
大成功で11月13日(日)大阪市立旭区民センターで歌い終えることができました。
雨の中でしたがたくさんのお客様にご来場いただきました。
皆様本当にありがとうございました。
「ギタリストの皆さんがとにかく楽しそうに弾いていた」というお声を多数いただきました。
はい、大切にしましたし、こうなることは必然だった気がします。
約20年間共に奏でてきた私たちのファドが大輪の花を咲かせた感覚でした。
ハーモニーを作り込む難曲、そして醍醐味の即興、
果敢なチャレンジは全て楽しかった、Valeu a Pana!
素晴しき友人であり演奏家、そして良き指導者であるセルジオ。
彼と一緒に日本人として、女性として、母として私はファドを歌いたい。
日本とポルトガルの大切な仲間と演奏したい。
その決意で春から準備をし、来日ツアーを行いました。
夏に急遽出演が決まった日本在住で世界で活躍するテノール歌手ロベルトさん。
「O Cacilheiro 連絡船」「Um Homem na Cidade 街に男ひとり」など、
難曲を繊細に、時に圧倒的な声量で大胆にきかせてくれました。
ポルトガル人の血と誇りと共に、様々な国の血も持つロベルトさん、
日本人の私がファドを愛して歌うことを大事に受け止めてくれました。
「日本人なのにファドを歌うの?!」これはポルトガルでよく聞かれたこと。
多くの人が歓迎してくれたけど、批判も嘲りも受けた修業時代、
いつしかこの質問は「ポルトガル人じゃないとファドを歌ってはいけないの?」と
感じるようにもなってしまっていました。
ポルトガルの魂と言っても過言でないファドを歌うには国籍は大きな壁でした。
乗り越えて頑張ろうという大きな力にもなったけれど、
心のどこかに棘のように刺さっていました。
ファドは大好きになるばかり、でもどこか遠い、
まるで大いなる片思い・・・。
でも、このツアーが終わって、ふと気付くと棘は消え去っていました。
迷いなくファドに生きることが出来たからだと思います。
ロベルトもセルジオも私に「日本人なのに」とは言わない。
言うのは「ファドが好きなんだね、素晴しい」。
日本人ギタリストたちのことも大切に扱ってくれました。
コンサート最後、歌い上げ終わりに溢れた涙は
「ここまで来た!」と溢れた感情、
ファドに生きている自信が内側から生まれたものでした。
「ポルトガル人じゃないとファドを歌えないの?」というのは、
私の不安や弱さから生まれた言い訳だった気がします。
今は何も怖くない。
準備から全てを見ていた幼い娘も大阪公演に帯同しました。
大阪公演は最初から最後まで聞いて、
曲が終わる度に一所懸命拍手をし、
覚えた出演者の名前を隣の祖母に伝えていたそうです。
ファドと生きる母をありのまま好きで居てくれています。
「日本人」が付こうが付くまいが、私は「ファド歌い」。
ファドとこの人生を謳歌していきます。
ありがとう。
Até logo!