世界に嫉妬しろ
- 2016.05.13
演出家の蜷川幸雄さんが旅立ってしまいました・・・。
今から15年前、演劇大学の授業と修了公演で思いっきり叩いていただきました。本当にありがとうございました。
自分の肌に叩き込まれた蜷川さんの怒鳴り声、その時委縮した自分、負けてたまるかと鼓舞した自分。
あの稽古・千秋楽から随分経つのですが、一瞬で全身があの時に戻るような感覚でした。
ノイローゼになるかと思った稽古期間、
でも本番の幕が下りると、舞台裏で私たちを笑顔で迎えて「よし!」と言ってくださいました。
「きつかっただろ?蜷川のハンコを押すんだから、手は抜かなかったよ」とも。
「鉄は熱いうちに叩かなきゃいけない、こっちが燃えてるんだからお前らも燃えろ!」
稽古場で飛ばした檄は愛でした。ただただ愛情深い方でした。
相手が誰であろうと蜷川さんは本気で仕事をしてくださいました。
惜しみなく全てを見せてくださった素晴らしい方でした。
その後蜷川さんの演出作品を観に行ったとき、すごく優しく迎えてくださいました。あの時のこと忘れられません。
「お前ら、世界に嫉妬しろ!」
今思い起こせば、私がポルトガルへ渡ることを即決できたのは、この言葉が脳裏に焼き付いていたからです。
まだ鮮明に鳴り響く蜷川さんの怒号に、今一度自分を問い直さなければと、反省と感謝の思いです。
私は蜷川さんが関わったものすごい数の演劇人の中のただの一人でしたが、その熱さは今も歌にも生かされています。
本当にありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
津森久美子